原町火力発電所の“今”

災害時の相互連携に向けて〜第二管区海上保安本部、海上自衛隊舞鶴地方隊、東北電力・東北電力ネットワークの4機関による共同訓練を実施〜 イメージ

 今年3月の福島県沖地震により被害を受けた原町火力発電所。早期運転再開を実現した「チーム原町」の取り組みを振り返るとともに、現在行っている地震対策の検討状況や安全活動など、安全確保を最優先に安定運転に努める同発電所の“今”をご紹介します。

原町1号・2号 1日も早い運転再開に向けて〜「チーム原町」の取り組み〜

 今年3月16日に発生した福島県沖地震により、原町1号は自動停止(原町2号は定期点検中)し、1・2号ともにボイラー内部の配管が損傷・変形したほか、共通設備である揚炭機も損傷・変形・脱輪などの被害を受けました。
 今夏は電力需給が非常に厳しい状況にあり、1・2号の補修作業と2号の定期点検を同時並行で進めることとし、早期運転再開を目指し工事関係者が一丸となって対応にあたりました。
 作業人員も通常の定期点検時の1,000人程度から1,500人程度に増員。被害状況の確認・共有にはスマートデバイス(スマホやタブレット等の情報機器)やクラウドサービス(データやソフトウェアをスマホ等の端末からインターネット経由で利用するサービス)などを活用した発電所O&M業務のDX化(運用・保守業務のデジタル化による変革)の取り組みが効果を発揮しました。これまで揚炭機の外観点検には足場の組み立てを含めて10日程度の期間を要していましたが、ドローンを活用することで、足場を組み立てずに約40mの高所の確認が可能となり、期間も3日程度と大幅な短縮を図ることができました。
 また、朝・夕の作業ミーティングでは、一人ひとりが「安全を第一に1日でも早く復旧する」ことを念頭に作業を行うことを繰り返し確認したほか、発電所構内協力会社を含めた工事関係者から最低限必要な作業の提案を受けるなど、早期復旧に向けてまさに「チーム原町」一丸で取り組みました。
 その結果、1号は地震から55日後の5月10日に運転再開。2号は昼夜2交代作業の実施や試運転工程の効率化などにより、当初の定期点検期間からわずか10日間程度の延長となる7月13日に運転を再開し、夏場の高需要期前の復旧を実現しました。

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地震の揺れにより、配管が壁に衝突し変形した状況と修復後の様子

今回の地震から得た教訓を生かして

 1号ボイラー設備の復旧対応に携わった原町火力発電所(技術G)東大野 晃慈さんは、「普段から緊張感を持ち、補修作業に取り組んでいますが、昨年2月の地震からわずか1年1カ月後に同規模の地震が発生したため、正直心が折れかかりました。今回の対応を教訓に、大きな地震は『すぐに“来ない”だろう』から『“また来る”かもしれない』といった、普段からの心の持ち方の大切さを改めて感じました。今後も、いかなる大地震にも耐えうるように、自分の心と発電所の両方に『かもしれない』の考えで備えを進めていきたいと考えております。また、地震後の対応を至近で2度も経験したことから、次に同規模の地震が来たとしても、より迅速な復旧対応に努めます。」と力強く語っていただきました。

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原町火力発電所(技術G)東大野さん

「ボイラー設備の地震対策の検討」や「揚炭機の補修作業」を実施中

 昨年2月の地震でもボイラー内部の蒸気配管などに被害を受けたことを踏まえ、現在、ボイラー設備の地震対策の検討を進めるとともに揚炭機の補修作業を実施しています。
 1号はボイラー内部の配管について、管と管をつなぐ金具の箇所数を増やし変形抑制を図るとともに、配管ルートを変更し揺れによる衝突を回避する構造変更を行うこととしています。
 また、2号はボイラー防振装置※1の追加設置等を行うこととし、ボイラーメーカーによる耐震解析※2を実施しています。1号は2023年〜25年までに工事完了予定、2号は2022年〜23年までに工事完了を目指しています。
 揚炭機は全4機が被害を受けましたが、このうち被害が比較的軽微だった2機の応急補修を行い、6月1日より1機で揚炭を開始し、7月10日からは2機で揚炭を実施中です。
 補修作業は、国内に数艇しかない大型クレーン船を手配し、揚炭機を吊上げ・移動し、損傷した脚部の補修を行うなど大規模な作業となりました。今後、残り2機の早期復旧を目指して、安定的な揚炭運用を実施していきます。
 応急復旧の箇所も多く残る中、今後も安定運転に向け、日頃の機器の点検・保守をしっかり行っていくこととしています。

※1 スプリングやダンパー等を組み合わせることで、地震の揺れが伝わるのを抑制する装置。
※2 ボイラーの3次元モデルを作り、地震により受ける力を解析し補強部位を特定するもの。

「ボイラー設備の地震対策の検討」や「揚炭機の補修作業」を実施中 イメージ1

大型クレーン船を使用した揚炭機の復旧作業の様子

「ボイラー設備の地震対策の検討」や「揚炭機の補修作業」を実施中 イメージ2

揚炭機脚部の損傷状況と修復後の様子
※青線が正常位置であるが、地震の影響で変形(赤線)

グッドサインでご安全に!「グッドセイフティ運動」を展開中

 発電所構内では所員・作業員同士が「ご安全に」と声を掛け合っていますが、ボイラー・タービン等の機器が設置された現場や工事中の騒音により、お互いの声が聞こえにくいこともあります。
 原町火力発電所では安全活動の一環として、昨年8月から「グッドセイフティ運動」を展開しています。親指をあげたグッドサインを相手に示すことで、声が聞こえにくい現場や離れた場所からでも、ジェスチャーでのコミュニケーションにより安全への声掛けをすることができます。
 本運動は、鈴木所長が上越火力発電所建設所長時代、ジェスチャー付きの声掛けに「グッドセイフティ運動」と命名し取り組んだことがはじまりで、原町火力発電所でも同様に実施しているものです。構内にポスターを掲示するほか、構内従業員のヘルメットには啓蒙ステッカーを貼り付けることで、安全への意識を高めるとともに一体感の醸成を図っています。一人ひとりの安全意識レベルの向上と仲間に対する働きかけにより、お互いに気遣い、お互いに注意し合える安全職場づくりに貢献する取り組みを展開しています。

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現場でのコミュニケーションの様子

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ヘルメットに貼り付けられた「グッドセイフティ運動」のステッカー