郷土料理を未来へつなぐ、頭巾・割烹着姿の女性たち!「津軽伝承料理」津軽あかつきの会/青森県弘前市石川

郷土料理を未来へつなぐ、頭巾・割烹着姿の女性たち!「津軽伝承料理」津軽あかつきの会/青森県弘前市石川 イメージ

 青森県は津軽地方、冬は雪に閉ざされ、白銀に光る岩木山のふもと。この地域には、独特の家庭料理が伝えられています。そこには厳しい冬を乗り越え、1年を豊かに暮らすための知恵や工夫がてんこ盛り。そのレシピを継承し、次の世代に伝える活動をしている『津軽あかつきの会』を取材しました。

『津軽あかつきの会』とは・・・「伝承料理」活動とは・・・

 『津軽あかつきの会』は、「伝承料理」活動に取り組んでいます。

<「伝承料理」活動>

 地域に根付いた産物を使い、地域独自の調理方法で作られた郷土料理が、津軽地方にはたくさん残っています。これをレシピ化して実際に調理し、多くの人に味わってもらうことによって、地域に伝わる食文化を幾世代にもわたって後世へと伝える活動です

 『津軽あかつきの会』とは、青森県弘前市で活動している女性でつくる料理研究ユニットです。会員は20代〜80代と幅広い年齢層にわたり、32名が在籍(2022年1月末現在)しています。
 名前の由来は、忙しい農家の女性が集うことのできる唯一の時間帯が「早朝(=あかつき)」だったこと。発足は2001年です。

 発足の1年後の2002年には、NHK文化センター弘前教室で津軽の郷土料理を題材にした料理教室をスタート。2006年には「津軽の伝承料理」と題する初のレシピ集も出版。発売後わずか2ヵ月で完売するほどの人気ぶりでした。
 その頃より徐々に県外からの料理教室や食事会の予約が増えはじめ、台湾・香港・アメリカ・フランス・スイスなど海外からの訪問も受け入れるようになりました。
 現時点で活動歴は20年以上。地域でのヒアリングも続け、これまでに集めたレシピはなんと200以上です!

『津軽あかつきの会』とは・・・「伝承料理」活動とは・・・ イメージ1

一年かけて冬に備える

 『津軽あかつきの会』がつくる料理は、スーパーやコンビニはもちろんのこと、冷蔵庫もなく、ごく限られた食材しか手に入らなかった時代に生み出されたものです。
 使う食材は地元で採れたものが基本。春は山菜、夏はキュウリや茄子などの果菜が中心で、秋にはキノコや大根、赤カブなどの根菜を使用します。
 調理してすぐに食べるのは一部で、大半は保存食として加工します。これは、採れる食材が少なくなる冬を備蓄で乗り越えるため。
 主な保存方法は、塩蔵・乾燥・発酵の3種で、食材ごとに使い分けています。
 そうして春から貯蔵してきた保存食は、津軽の長い冬(概ね12月〜翌3月)の間、食卓に上ることになります。

【メニューを1つご紹介★鮫(サメ)なます

鮫(サメ)なます イメージ

「日本酒飲みてぐなる〜」by津軽弁

 遺跡調査により、津軽地方では縄文時代からサメを食べていたことが分かっています。現在、主に食べられているアブラツノザメは、青森県内のサメ漁獲高の9割を超えるともいわれ、鮮魚店には普通に切り身や頭が並んでいます。

材料
サメ(身)50g、サメ(ハラス)50g、大根おろし500g、塩10g
〔調味料3種〕味噌20g、五倍酢(小さじ1)、酒(小さじ1)

作り方
1.鍋に湯を沸かして酒(少量)を加え、サメの身とハラスを10〜15分間ゆでる(箸がすっと通るまで)。ザルにとり粗熱をとる。
2.1を細かくほぐす。
3.大根おろしに塩をふって混ぜ、2〜3分間なじませる。ザルにとり、水気をきる。
4.すり鉢で調味料3種をすり混ぜる。2と3を加え、さらにすり混ぜて完成。

料理を生かし続ける。後世につなぐ

 「料理を後世に伝える唯一の方法は、つくって、食べること」と話すのは、『津軽あかつきの会』会長の工藤良子さん。
 「一度は忘れられかけていた地域の食文化が、後世に受け継がれつつあるこの流れを止めたくない。見て、つくって、食べること。皆さまのおかげにより、このような活動を通して、料理を生かし続けることができるのです」。

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会長の工藤良子さん。優しいお人柄がにじみ出ています

 他のメンバーの方は「先の世代の保存食づくりの知見は、地理や気候といった自然環境に寄り添った素晴らしい文化」と語ります。

 自ら栽培・採取した生産物を大切に保存し、長い冬を通してそれらを味良く調理して、春まで命をつないできた代々の食文化が、津軽には受け継がれてきました。

 「これを失ってしまうことは、大きな損失だと思います。これらの宝を次の世代に引き継いでいきたいという思いで、活動をはじめてから20年が過ぎました。幾世代にも渡って引き継がれてきた私たちの地域の伝承料理を、これからも多くの人にお届けしたいと思っています」。

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 なお、私たちが訪問した日、工藤さんは仲間のおばあちゃんたちと一緒に、地域に伝えられている「手遊び」や「童歌」などを記録に残す活動をしていました。伝承するものは料理だけではないんですね。

山の恵みに感謝して、いただきます!

 『津軽あかつきの会』では、「伝承料理」活動の一環として、予約制で津軽地方の郷土料理を提供しています。
 取材にお邪魔したのはちょうど「津軽の長い冬」の期間。春からの保存食のおかげで、見てのとおりとても豊かな食卓に。

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取材時にいただいた料理。写真に収まりきらない品数です!
「たげ、うめがった〜(とても美味しかった)」by津軽弁

 青森県出身の筆者。昔から何気なく食べていた津軽の郷土料理が、どれだけの手間と時間を掛けて、真心を込めて作られていたのか、改めて考えさせられました。
 この地に生まれたからこそ食べられる味を、私がそうだったように、今の子供たちの世代にも「当たり前」に食べてもらいたい!
 郷土料理を「伝承」していこう!そう強く思いました。

 今回いただいたフルコースの料理は、1食1,500円の予約制で、週に数日開催しております。詳しくはHPをご確認ください。

 HPはこちら⇒伝承料理 | 弘前市石川字 | 津軽あかつきの会  フェイスブックもあります

爆売れ中の書籍のご案内

 『津軽あかつきの会』が現在販売しているレシピ本『津軽伝承料理』。先にご紹介した「サメなます」などの郷土料理レシピがぎっしり、88品も詰まったバイブル本です。
 青森県では、2021年7月の発売から現在まで、書店の売り上げランキング上位にずっと位置するほど爆売れしてます!
 県内の方はもちろん、「青森はちょっと遠い……」という方も、この一冊があればご家庭で「津軽の味」が楽しめますよ。インターネットでも購入可能です。

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【発行元】柴田書店

 また、青森に行きたい!『津軽あかつきの会』に郷土料理を食べに行きたい!と思ったあなた。

 「待ってるはんで、青森さ、遊びにこいへ!(待っているので、青森に遊びに来てくださいね!)」by津軽弁